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ロシア・ウクライナ戦に見る日本の安全保障について(雑感:2022年7月)

世界は今、大きく変化しています。覇権国家の争いの前兆でしょうか。

過去、アテネとスパルタの争いや、ローマ帝国、漢王朝、モンゴル帝国、オランダ(ハプスブルグ家)、イギリスとロシア(グレートゲーム)、そしてアメリカ。台頭しようとすると、半分は戦争になった歴史。太平洋戦争やバブル崩壊前のプラザ合意も日本の台頭を嫌ったアメリカの思惑かも…そしてソ連もSDI構想で追い落とした。

そんなアメリカも冷戦終結し、同時多発テロを経験して、次第に疲弊してきたのでしょうか、国際紛争の焦点が欧州から中東、インド太平洋(中国の一帯一路封じ込め)へとシフトし、2正面作戦できるだけの外征軍を整えられなくなりました。そして2021年のアフガン撤退。国が自分自身を護る能力・気概がなければ、アメリカは見捨てる、というメッセージに捉えられてのでしょう。その他も色々あったのでしょうが、ロシアはウクライナに侵攻しました。

序盤、ロシアはキーウの占領を目指しました。素早く占領することにより、ゼレンスキー大統領を追い出し、傀儡政権による暫定統治で資源豊富なウクライナを手中に収めたかったのでしょうが、失敗しました。そして東部地区の開放に戦略目標を切り替えたのでしょうか。

NATOの結束は固く、加盟国でないウクライナを支援する動きは世界中に広がりました。

実は、ゼレンスキー大統領は2019年5月に大統領に就任しましたが、ウクライナが抱える経済、汚職、紛争といった難問を解決できず、当初7割台だった支持率は下落し、2021年10月には25%まで落ち込んでいました。局面打開を狙ったのか、同年10月26日東部の紛争地域で親ロシア派武装勢力への攻撃にトルコ製ドローン「バイラクタル TB2」を初めて使用しました。それまで紛争地帯で毎晩のように銃撃戦等が行われていた証言があり、そうした状況をなんとかしたいという発露だったのでしょう。そして、親ロ派の後ろ盾のロシアは27日、紛争をエスカレートさせる恐れがあると警告していました。このようなことから、欧米はウクライナに苦言を呈する状況だったのです。そしてロシアはベラルーシとの合同軍事訓練を名目に戦力を集中、アメリカ軍もそれに対抗するため増派を決定する等して、そうはいってもまさか戦争まではいかないだろうとの大方の予想をひっくり返し、侵攻を開始しました。2014年のクリミア侵攻の状況から、今回も厳しいのでは?と思ったのかアメリカはゼレンスキー大統領にキーウ撤退案を示しましたがこれを拒否、「断固戦う」意思を示したことで、アメリカ含むNATO諸国は元俳優・コメディアンのゼレンスキーが率いるウクライナに対する認識・評価を改めたのだと思います。

多くの国の支援を受け、ウクライナはある程度押し返しましたが、東部の奪還には至っていません。東部を解放するとして特別作戦を行った結果、将官を何人も殺害されたロシアも簡単には引き下がれません。そういったことからこの先どうなるかはまだ誰にも予見できません。しかし、「力による現状変更」を行ったロシアを日本が許してはいけません。同じようなことが今後容易くできる、野心をもった国家に成功の可能性があるだろうという妄想を抱かせてはならないのです。

今回のロシアのウクライナ侵攻から学ぶとしたら、戦争は起こさせてはいけないということです。ウクライナの抑止が破綻したから起きたのです。そうした意味では核兵器を手放したことは抑止力の一端を自ら手放した何故今回破綻したのか今でも様々な意見がありますが、今後更なる研究がなされると思われます。しかしそれを待つことなく、我々は我々の抑止力を更に高める必要があります。安全保障枠組みの実効性向上といった国家レベル、米軍との協同訓練等による実効性も同様です。装備品の能力だけでなく、作戦遂行能力、継戦能力、情報収集能力、輸送力、緊急調達能力等様々な能力を再点検し、今そこにある危機、未来に起こりうる危機に対応する能力を具備しなければなりません。そして我々自身の作戦遂行能力も向上させるとともに、日本を護る気風が必要と思っています。

日本の周辺には、ロシア、中国、北朝鮮といった西側でない国家、民主的でない国家がそろっています。片務性の日米安全保障条約がどこまで通用するのでしょうか。アメリカが信頼に足る、自分の国は自分で守る意思があり、能力がある。そうしたことができるよう、新たな戦略3文書(「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」)の策定が望まれます。

幸い?令和5年度予算の要求は上限撤廃されているそうで。積年の歪みを是正する良い機会です。納税者の皆さんも成程、と納得いただける予算案の案出が待たれます。

2022年7月 富士山麓にて。

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